私たちは不眠症で悩むこともあります。眠れない夜にこんなことを考えた事はないでしょうか?
「そもそも睡眠は、どのような目的で、なぜ必要なんだろうか?」
「身体を休めるだけなら、動かないでじっとしていればいいはず。人間はさておき、動物なら寝ている間に攻撃される可能性もあるし…」
私たちに必要な睡眠とは、どのようなものなのでしょうか?
睡眠とは?
まずは、睡眠ついて考えてみましょう。
睡眠とは、以下のような状態のことを指します。
からだの動きが止まり、外的刺激に対する反応が低下して意識も失われているが、簡単に目覚める状態のこと
引用元:広辞苑
似ている状況では、「気絶」や「意識不明」などもありますが、このような状況は簡単に目が覚めないため、睡眠とは言うことは難しいです。同じように、お酒などで深く眠っている状況も、睡眠とは言うのは難しいかもしれません。
現代の日本は、睡眠中に敵に襲われることはないので、多少の刺激ではなかなか起きない人も多いです。3月11日に起きた東日本大震災では、震度7で家が倒壊したり、津波で家が流されたりしました。それにも関わらず、ずっと2階で寝ていた人もいるほどでした。
睡眠が必要な一番の理由は、疲労回復
人はなぜ、睡眠をとるのでしょうか?一番の目的は、日常の疲れやストレスを解消するためです。
日常の何気ない行動や考えも、心や身体に大きな疲労やストレスを与えている場合もあります。そのため、仕事や勉強で一夜漬けを行うと、普段の力が発揮できず、その結果として効率が悪くなる場合もあります。
溜まった疲労やストレスを回復する必要があるので、「何もしない時間」である睡眠が存在しています。
その他にも、睡眠には以下のような役割があります。
ストレスの軽減
心と身体の疲労を回復
成長ホルモンなどを分泌し、身体のメンテナンスを行う
免疫力の向上
その日起きた出来事(記憶)の整理と忘却
睡眠には、身体のメンテナンスだけでなく、イヤな記憶やストレスを消す役割もあります。
眠れなかった翌日に頭の中がスッキリしないのは、必要のない記憶が頭の中に残っているからなのです。
睡眠のメカニズムとは~レム睡眠とノンレム睡眠について~
「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
人間は、深い眠りと浅い眠りを繰り返しています。眠りが深い状態はノンレム睡眠(逆説睡眠)、眠りが浅い状態がレム睡眠(徐波睡眠)と呼ばれています。
レム睡眠のレムは、急速眼球運動(Rapid Eye Movement)の略称です。レム睡眠をしているときには、目が活発に動いています。ノンレム睡眠のときには、強い刺激でも起きにくくなるのが特徴です。
レム睡眠とノンレム睡眠の特徴は以下のようになります。
レム睡眠
睡眠の深さ 浅い
脳 活発に動いている
身体 眠っている
夢 夢を見る
その他 金縛りになりやすい
ノンレム睡眠
睡眠の深さ 深い
脳 寝ている
身体 身体は寝ているが、筋肉は活発
夢 夢を見ない
人間は、8時間の睡眠でレム睡眠とノンレム睡眠を、4~5回程度繰り返しています。そのため、1回の睡眠で4~5回程度の夢を見ているのです。しかし、覚えている夢は、最後に見たものだけになります。
睡眠の深さと段階
1957年に、Dement先生とKleitman先生は、睡眠の段階と経過時間について研究しました。この研究によると、睡眠には深さに合わせて4段階あり、1番浅い第一段階がレム睡眠です。
一般的には、眠りについてから30分~1時間ほどで深い眠りになります。
その30分後にはレム睡眠となり、再び深い眠りに落ちていきます。
その後も、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返し、回数が増えるほど眠りが浅くなります。5時間後以降は、レム睡眠とノンレム睡眠の間程度になります。
これは5~6時間経つと、身体の修復が終わることを意味しています。睡眠の数値だけ確認すると、4時間30分で起きても問題ないかもしれません。
不眠症の人は「4時間しか寝れない」と嘆くことが多いです。しかし、肉体的には4時間で90%程度は回復しているので、心配する必要はありません。
睡眠時間が少ない場合、多くの人はストレスだと思っています。原因は、ストレスや記憶の忘却が終わっていないことや、「眠らなければいけない」という脅迫観念があるからです。
このようなときには、布団に入り電気を消すだけで十分でしょう。
眠れないとどうなるの?~不眠の悪影響~
眠れないときのもっとも深刻な悪影響は、心のストレスです。
人を寝かさないことは、拷問や尋問でも使われている手法です。人を寝かさなければ心が壊れ、一週間もすれば屈強な軍人でも自白をしてしまうでしょう。
不眠症は、このような状況ととても似ています。
拷問の場合には、強い光を浴びせるなど、心も身体も休ませない行為をする場合もあります。だからこそ、カーテンを閉め周りを暗くするだけで、十分休むこともできます。
時には、うつ病、怒りや不安を覚える、言葉がうまく話せない、考えがまとまらない、吐き気、めまいなどの心理的な問題が起きることもあります。
肉体的な悪影響には、身長が伸びない、胸が小さいまま、肌荒れ、肥満、空腹などが起きることもあるでしょう。
このような症状がある場合、部屋を暗くして、無音状態で布団に入れば、症状を緩和できます。
寝れない場合でも、まずは横になる生活リズムを作ることが大切です。
不眠症とうつ病の関係性
不眠症になると、多くの人がうつ病を発症してしまいます。うつ病になるリスクは、正常な人の約40倍という驚異的な数字です。
これは、眠りが浅くなりがちになり、ノンレム睡眠の時間が短い、また十分な深さまで眠れていないのが原因です。
ノンレム睡眠でも眠りが浅い場合には、デルタ波と呼ばれている脳波が弱くなることが確認されています。デルタ波の不調は、うつ病のトリガーだと言われています。
近年は、デルタ波が睡眠をとる理由だと考えている人もいます。筑波大学では、デルタ波の研究し、以下のような研究結果をレポートしています。
今回の実験で、レム睡眠にはデルタ波の神経活動をノンレム睡眠中に誘発するスイッチの役割を担い、この作用によって、学習や記憶形成が促進されることが分かった。
引用元:ハザードラボ 夢見る「レム睡眠」学習や記憶形成が進む 筑波大 うつ病研究にも
これから、この研究が進めば、睡眠障害やうつ病などの不眠症のデメリットが起きず、寝る必要のない身体になる可能性もあるかもしれません。
不眠症や睡眠障害、うつ病は、本人の努力で解決するのは難しいため、漢方薬やサプリメントを使い、身体の調子を整えることが大切です。