不眠症や夜更かしをすると、体内時間がズレると言われています。
この体内時計とは、どういったものなのでしょうか?この記事では、体内時計について掘り下げます。
体内時計には、たくさんの種類がある
時間生物学というジャンルを知っているでしょうか?
生物の行動パターンは、一定のリズムで決められていると言われています。それを体内時計と言います。そしてそれを研究しているのが、時間生物学ということです。
体内時計は、身体にある行動パターンのことで、時間生物学では生物時計とも呼ばれています。
体内時計は、いくつかの種類があります。「睡眠のパターン」をはじめ、呼吸や心臓の鼓動、女性の生理など、いくつも当てはまるものがあります。
これらは、周期パターンにより以下の種類に分けることができます。
・1秒~1時間の周期であるウルトラディアンリズム
・1年周期である概年リズム(サーカニュアルリズム)
・1ヶ月周期である概月リズム(サーカルナルリズム)
・24時間周期である概日リズム(サーカディアン・リズム)
人間の人生も、ひとつのリズムとして扱われることもあります。
今回は睡眠や不眠の目線から、体内時計について説明していきます。
レム睡眠とノンレム睡眠を扱うウルトラディアンリズム
ウルトラディアンリズムは、1秒から約1時間で訪れる体内時計です。
最も身近なのが呼吸です。普段の呼吸は、メトロノームのように一定の感覚で息を吸い、吐く動作をしています。
睡眠でウルトラディアンリズムに該当するのは、レム睡眠とノンレム睡眠です。
人は眠ると深い眠りのノンレム睡眠に入り、その後60~90分後に浅い眠りであるレム睡眠に入ります。その後、ノンレム睡眠になり、この繰り返しはウルトラディアンリズムと言えます。
腸内運動や赤ちゃんの授乳をはじめ、集中力、神経活動、脳波などもウルトラディアンリズムです。
ウルトラディアンリズムがズレる原因は、呼吸のように意図的にズラす、また加齢なども理由になります。
レム睡眠・ノンレム睡眠はその典型で、10~20代の人は規則正しく周期をしますが、80代の人ではノンレム睡眠がとても浅くなります。
概日リズム(サーカディアン・リズム)は、一般的な体内時間のこと
1日の行動を決めるための周期が、概日リズム(サーカディアン・リズム)です。時間生物学でも、メインテーマとして研究がされています。
概日リズムに該当するのは、起きている時間やホルモンバランス、食事や臓器の働きなどとなっています。
人間以外の生物も概日リズムを持っており、細菌もこれに準じていることが研究により分かっています。この研究結果で、細胞やDNAだけで概日リズムは決められていないことが判明しています。
このリズムは、生物の最も古い細胞が持っている機能で、人が眠る理由と関係しています。
人間は日中に様々な活動をすることで、肉体的・精神的・細胞的にダメージを受けます。細胞は、自身を複製するので、ダメージを負った細胞が増えるのは好ましくありません。
そこで細胞の修復や増殖は、外部からのダメージが少ない寝ている時間に行うことで、問題を解決していきました。
概日リズムは、視交叉上核が制御をする役割を担っています。この説明は、後ほど詳しく行ないます。
調整とフリーラン
人間の身体の体内時間は、25時間になっていると聞いたことはないでしょうか?
カーテンを閉め切って、トイレと食事以外は一切外へ出ない引きこもりのような生活を行うと、昼と夜が逆転します。
人間の体内時間は、約25時間周期なので、外部からの刺激がなければ、毎日1時間ずつズレてしまうのです。
このような、人間の体内時計に忠実に従ったリズムで生活することを、フリーランと呼んでいます。
睡眠に関わる体内時計は、2種類存在しています。
1.メラトニン分泌をはじめ、ホルモンバランス調整の体内時間
2.起きている時間を調整する体内時間
人間の身体の体内時間は、25時間と先程も紹介しましたが、これはホルモンバランス調整の体内時間のことです。
起きている時間の周期は通常24時間ですが、約20%の人が30時間という状態になっています。この状態では、1日生活しているだけでも、体内時計が大きくズレてしまいます。このことを、内的脱同調と言います。
内的脱同調を起こすと、起きていたい時に睡眠ホルモンが分泌されたり、寝たいときにも覚醒ホルモンが分泌されるよになり、不眠症や身体の不調を覚えます。
では、どのようにこのズレを直せばいいのでしょうか?
先程、細胞の回復は、夜に行っていることを説明しました。では、朝と夜の違いは何でしょうか?それは太陽の光です。
正確には、太陽光で体内時計のボスである、視交叉上核をリセットします。ここを調整すると、全ての体内時間が視交叉上核の時間に合わせて調整されます。
つまり、生理的原因による不眠症は、外に出れば大抵の場合は改善するということです。
女性にとって大切な概月リズム(サーカルナルリズム)
サーカルナルリズムは、約1ヶ月の周期で起こる体内時計です。
約1ヶ月単位で現れる人の変化が、何かわかるでしょうか?それは月経です。
サーカルナルリズムを日本語に訳すと、概月リズムです。月経と同じように「月」という言葉が入っています。この月は、1ヶ月を表す「月」ではなくて、空に浮かんでいる月のことを指しています。サーカルナルリズムの周期の基準は、月の満ち欠けと同じ29.5日になっています。
人の生理は、月の満ち欠けと関係なく訪れるので、厳密にはサーカルナルリズムではないと主張する人もいます。
気分に作用しているのが、概年リズム(サーカニュアルリズム)
体内時計のなかで、概年リズム(サーカニュアルリズム)が最も長いスパンなのが、です。このリズムは、約1年周期で訪れています。
動物などが冬に冬眠をするのは、概年リズムが働いていることが理由です。渡り鳥の移動も、概年リズムが理由になっています。
人間には概年リズムは存在しないと思われることもありますが、以下のように細胞レベルでは様々な変動が起きています。
イギリスの研究チームによれば、季節性のウイルスをはじめ、スギ花粉などのアレルギー反応は、季節によって大きく変わることを示しています。毎年起こる特定の疾患に対して、身体が自動で対策をとっているのです。
これも立派な概年リズムと言うことができます。
一口に体内時計と言っても、これだけ多くの種類があります。ここで紹介したものは、ごく一部です。身体の臓器も、それぞれの時計を持っています。
体内時計を調整するためには、太陽などの光を浴びることが手っ取り早い方法です。太陽の光を浴びることにより、視交叉上核と呼ばれる体内時計のボスがリセットをしてくれます。